Web2.0な監視社会? (1)

ちょっと前に当て逃げされた時の動画がネット上に公開されて、犯人の乗っていた車の所有者が突き止められ、会社を解雇されるに至ったという事件があった。事件の概要としては、起こりうるだろうなという予想の範囲内の出来事ではあったけれど、その展開のありさまを追いかけると、いまの監視社会の姿を考えるのに、ものすごく格好の事例となってしまっているようなので、それについて考えたことをエントリしておく。

監視社会の姿の変遷をたどるのに気に入っている整理がある。

  ビッグ・ブラザー
     ↓
  ビッグ・ブラウザ

これは、ニューヨーク州エリオット・スピッツァー司法長官が2000年にいったとされる、「現在、我々が脅威を抱いているのは、『ビッグ・ブラザー(Big Brother)』ではなく、『ビッグ・ブラウザ(Big Browser)』である」という言葉による。岡村久道さん、新保史生さん著の『電子ネットワークと個人情報保護―オンラインプライバシー法入門』(経済産業調査会2002年)に教えてもらった。ビッグ・ブラザーというのは聞いたことがある人も多いと思うけれど、オーウェルが『1984年』で描いた全体主義的管理社会を象徴的に指し示す言葉。その後、政府による一元的な管理社会を比喩するときに援用され、いまでもよく使われる言葉だけれど、スピッツァーさんは、いま問題はこの「ビッグ・ブラザー」ではなく、「ビッグ・ブラウザ」なんだという。これは、大企業による大規模な──時には政府機関によるそれを上回る規模の──個人情報の収集こそが、いま問題だという認識にねざしている。「ビッグ・ブラウザ」とはこうした個人情報を収集し、蓄積している大企業を指している言葉。機知に富んだ、いい整理ですよねぇ。

でも、私は今度の当て逃げ動画の事件の展開を見ていて、いま、この日本で問題なのって、それだけじゃないかもな、と思った。で、仮に下のような整理をさらに仮設してみた。

  ビッグ・ブラザー
     ↓
  ビッグ・ブラウザ
     ↓
  ユビキタス・ブラウザ

最後の「ユビキタス・ブラウザ」ってのが、今日ここで考えてみたいことで、タイトルにもした「Web2.0な監視社会?」ってこと。まあ、言葉遊び的にもうまくないし、Web2.0ってのも、なんだかうさんくさい言葉だって思っているので、「?」なしには使えないのだけれど、今日現在、他にいい言葉が思いつかないので暫定的に使っておく。主意は事態の把握のしかたの方にあるので、言葉尻だけに反応しないでくださいね(^^;