移動履歴を蓄積してこんな実験をするそうな


 まったく何を考えているのか、というニュース。防げるわけないだろ。「あなたは感染者と同じバスに乗っていました」というような事後報告だぞ(T-T) インフルエンザを口実に、この種の実験を実現したいのだろうなぁ。

 しかしGigazineの記者は「被害を最小限に抑えるという観点では非常に意義がある実験なのではないでしょうか。」(「総務省、インフルエンザなどに感染した人に近づくとメールで知らせる仕組みを実験へ」)とか言っているよ・・・ それが平均的な現在の感性なのだとすると、こういうシステムが「実験」の次の段階に進む日も遠くないのかも。

 ニュースソースは以下。

「感染者に近づけばメールが届く 携帯電話で秋にも実験」

asahi.com)2009年5月3日13時17分


 利用者の居場所を特定できる携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能を活用し、感染症の世界的大流行(パンデミック)を防げないか――。総務省は今秋にもこんな実験に乗り出す。新型の豚インフルエンザの感染拡大懸念が強まるなか、注目を集めそうだ。

 実験は都市部と地方の2カ所で計2千人程度のモニターを募って実施。GPSの精度や費用対効果を見極め、実用化できるかどうか検討する。

 具体的には、携帯電話会社などがモニター全員の移動履歴をデータベースに蓄積。その後、1人が感染症にかかったとの想定で全モニターの移動履歴をさかのぼり、感染者と同じ電車やバスに乗るなど感染の可能性がある人を抽出し、注意喚起や対処方法を知らせるメールを送る試みだ。

 こうした個人の移動履歴や物品の購入履歴を活用するサービスには、NTTドコモが提供する携帯電話サービス「iコンシェル」などがあり、今後もサービスの増加が見込まれている。ただ、プライバシーである移動履歴をどこまで共有して活用できるか、といった点は意見が分かれる。このため、総務省は実験を通じ、移動履歴の活用に対する心理的抵抗感などもあわせて検証する方針だ。(岡林佐和)

http://www.asahi.com/business/update/0502/TKY200905020184.html

 以下は少し古いニュースだけれど、ちょうどセットにして考えるべき動向なので掲げておく。


性犯罪者にGPS 出所時同意で装着、法務省検討

中日新聞(2008年12月28日 朝刊)

 法務省は、性犯罪受刑者が出所した後の居場所を把握するため、衛星利用測位システム(GPS)端末を同意の上で装着させることを検討している。GPSを活用した犯罪の再発防止策が欧米などで広がっていることを背景に、日本でも実施の可能性が出てきた。

 出所者の同意を得るとはいえ、GPSを使った防止策は人権やプライバシー侵害として反対の声は根強く、議論を呼びそうだ。

 日本では、2004年に奈良市で発生した小1女児誘拐殺人事件を機に性犯罪者対策を強化。法務省は翌年6月から、13歳未満に対する性犯罪受刑者の出所予定日や居住予定地などの情報を、警察庁に提供するようになった。

 各警察署が所在を確認するものの、行方が分からなくなるケースもあった。

 法制審議会の部会などで問題提起され、今年4月にGPS活用の検討を自民党の特別委員会が提言した。

 英国や米国では、性犯罪の前歴のある人の住所や顔写真などを提供。米フロリダ州では拘禁刑終了後も生涯、GPS端末装着を義務付ける法律が制定され、他の州に広がっている。

 韓国では今年9月、たびたび性犯罪を繰り返す受刑者の仮釈放後や出所後、居場所や行動を電波で24時間把握する「電子足輪」の運用が始まっている。装着期間は最大10年。

 日本の場合、性犯罪の中で強姦(ごうかん)の認知件数は2000年以降、2000件から2500件の間で推移。06年からは2000件を下回り、再犯率は傷害や詐欺などに比べ低いが、被害者が届けないために統計に表れないケースも多いとみられる。